今日は2014年5月21日にフェイスブックに投稿した記事です。
なんとなく思い出したので、こちらにも転記しておきます。
あ、こちらのお客さま、今もお元気ですよ。
では、どうぞ。
===========================================================
ひとりのご新規のお客さまが来られました。 そのお客さまは、帽子を目深に被り、うつむき加減で節目がちに入ってこられました。
「カットをお願いします。」
セット面にご案内してカウンセリング。
現状はあご下ラインの毛先の揃ったボブです。
ボ→ボク
客→お客さま
ボ「どのような感じにしたいですか?」
客「短くしてください。あとはどうでもいいです。」
ボ「?」
ボ「どうでもいいのは難しいですね。現状で気になるところとかございますか?」
客「どうせ抜けてなくなるんだから、どうでもいいです。今の長さだと抜けたときに気になるから、とにかく短くしてください。」
ボ「!」
こちらのお客さま、乳がんを患って、乳房の切除手術をされて、明日から抗がん剤治療のため、入院されるそう。
そこで、抗がん剤の副作用で起こる脱毛を見るのが憂鬱なので、少しでも気にならないように、とにかく短くされたいらしい。
シャンプーを終えて、カットを始めます。
そこで、
ボ「もし他人事のように聞こえて、ご気分悪くされたらゴメンナサイ。 どうせ抜けてなくなるんだったら、思い切ってカッコよくしちゃいませんか♪ 今しかできないくらいに。 ボクもプロの美容師なんで、どうでもよくはできないんです。 ボクは医学にも詳しくないので、今、あなたにできるのは、カッコいいヘアスタイルを提供することしかないんです。 それで、少しだけでもお客さまが元気になってもらうのが、ボクにできる精一杯なんです。 カッコよくしちゃっていいですか?」
客「わかりました。じゃあ、お願いします。」
カット中もいろいろお話させていただきました。
うちの家族も、同じように乳がんを患って切除手術をしました。
そんなコトや、少しでも元気になってもらえそうなコト。
客「白髪も伸びてきて気になるけど、もったいないしねぇ。」
ボ「そうですねぇ。」
根元に白髪が3,4cm見えてます。
確かに、抜けてしまう毛にカラーを施すには、コスト的にも、もったいないような気がします。
ボ「気になるようなら、今夜ホームカラーされたらいかがですか? 美容室でカラーするより、お安くできるし今回はいいと思いますよ。」
カットが終了しました。
いつものようにスタイルを確認してもらいます。
ボ「いかがですか? ここをこういうふうにして、ここをこんなふうにしているので、こんな感じでお手入れも楽なようにカッコよくしましたよ。 よろしいですか?」
客「あのぅ・・・
カラーもしてもらっていいですか?」
ボ「!?」
ボ「ハイ、カッコいいカラーにしますね(^^)」
カッコいい入院患者が生まれました笑
全ての施術を終えて、レジも済まされ、お客様に伝えました。
「必ずお元気になられるよう祈っています。その時にはまたボクにカッコよくさせてくださいね!!」
帽子も被らず、ピンと背筋を伸ばして歩いて行かれるお客様の後姿に、一礼をしてお見送りさせていただきました。
0コメント